2016年 10月 17日 ( 1 )

改正労働契約法の趣旨に反した国立大学での「5年雇い止め」を許さない
―「ストップ!東北大学3200名と全国の有期雇用職員雇い止め」緊急集会―

10月11日に参議院議員会館で行われたこの院内集会の際の、東北非正規教職員組合事務局・佐藤完治(長杉直人執行委員長の代理で参加)の発言を一部加筆して以下に掲載します。

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〈御礼のあいさつと決意表明〉
 ご多忙のところご参集くださいました皆さま、この集会にご賛同の意をご表明くださいました皆さまに、主催団体のひとつとして、まず、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 東北大学に雇用されている私たちの組合の組合員の言葉を紹介します。
 「非正規職員は、社会、使用者側が求める柔軟な雇用や低コストの労働力を、自分達の生活や将来を犠牲にして提供しています。それを競争の結果としてみんな納得させられています。そのうえ今回の東北大学の雇い止めにより、私たちは生存を脅かされています。」
 私はこの言葉を胸に刻んで、片時も忘れることのないようにしながら日々組合業務をさせていただいています。
 この集会の成功を力に、3,200人の雇い止め撤回・希望者全員の無期転換を求める東北大学との交渉、一歩も譲らず頑張り抜く決意をまず最初に申し上げたいと思います。
〈団体交渉から5つのポイント〉
 首都圏大学非常勤講師組合と共同で、6月27日、9月29日と、東北大学との団体交渉を2回行った結果として、現在私たちは大変強気でおります。負ける気がいたしません。その理由を5つ、要約して発言させていただきます。
 第一に、東北大学の雇い止めは以下の4つの点で違法性が濃厚な、悪質な、ブラックなものだからです。
 まず無期転換の直前の5年のところで雇い止めされるという点で、労働契約法の趣旨にもとるものです。
 また大学当局の説明でも約2割が、私たちの認識では4割以上が3年の上限を超えて雇用が更新され、上限自体が形骸化していた従前の状況を踏まえれば、総長判断で例外とされない限り5年上限を強行するというのは、不合理な不利益変更として、許されないと言うべきです。
 さらに5年上限という不利益変更を、2014年の就業規則改定により、2013年まで遡って適用しようとする不利益遡及でもあります。
 改正労契法に基づく無期転換権を阻止しようという脱法的意図を疑わざるを得ません。
 そして、就業規則の改定手続きにおいて、対象となる准職員、時間雇用職員の意見が十分反映されていないことは、パートタイム労働法や労働基準法の就業規則に関する条項に照らして見ても問題があります。
 大学側は私たちとの団体交渉で、新たに代理人弁護士を立ててきましたが、首都圏大学非常勤講師組合の志田書記長の調査によると、この弁護士事務所や、その他名だたる経営法曹の弁護士さんたちのなかにも、東北大学のような5年上限は法的に問題だという考えの方が多いことがわかっています。大学側は自らが依頼した弁護士からも、その違法性を指摘されかねない状況になっていると言えます。
 第二に、この問題が発覚して以降、全国の皆さんからのご支援が急速に高まり、さらに広がり続けているからです。
 本日ご参加の中村和雄弁護士をはじめ、5人の学者・弁護士が呼びかけ人となって発表した、東北大学に雇い止め撤回を求めるアピールには、現在160人を超える方が賛同署名しています。最近では、ご自身が賛同することに留まらず、「所属する研究会に資料を回します」とか、「所属する大学の組合にも紹介します」など、アピール賛同を呼びかける側に回ってくださる先生方が急激に増えています。
 このアピールは、これまでのマスコミ報道とも相まって、東北大学の雇い止め問題がひとり東北大学や宮城県内の問題にとどまらない、全国の問題であることを明らかにするうえで、大変大きな力を発揮してきました。呼びかけ人と賛同者の先生方に、改めて御礼申し上げたいと思います。
 そして本日、この集会に、このように沢山の方々がご参集くださっていること、超党派の国会議員の方々が賛同しご参加くださっていることが、世論の更なる高揚の契機となることは間違いないものと思います。
 第三に、雇い止めの対象となる東北大学の准職員、時間雇用職員の皆さん方自身が立ち上がり始めていることが挙げられます。
 東北大学職員組合が、雇い止めの対象となる准職員、時間雇用職員の方々に呼びかけ、里見進総長に対して、雇用の更新を求める署名を集めたところ、すでに1,200人近い方々が署名に応じられたことが、大きな話題となっています。
 私たちは、勇気を出して署名に応じた職員の皆さんに敬意を表するとともに、職員の皆さんから大きな期待と信頼を集めている東北大学職員組合に対しても、改めて深い敬意を表するものです。この到達は、決して一朝一夕に実現できたものではなく、これまで長年にわたり、非正規職員の雇用や労働条件を自らの課題として取り組んでこられたご努力の積み重ねの上に実現できたものだと思います。
 第四に、こうした中で東北大学の側が、ここに来て大変苦しい防御に回り始めていることが挙げられます。
 6月以来私たちは、労働組合の当然の権利として、昼休み、仕事の邪魔にならない時間帯に大学の事務室にお邪魔し、職員のご了解を得てビラを机上配布する等、学内宣伝を行ってきました。一定の学内宣伝を行っていることは、6月27日の1回目の団体交渉でも当局側に報告しました。3回目の事務室訪問を行った7月28日の翌日になって、大学当局は突然、学外の組合関係者に事務室へのビラ配布のための立ち入りを禁ずる一通のメールを送付し、組合側の理を尽くした説得や抗議にも関わらず、未だにこの措置を解いていません。ただこれは、私たちの影響が職員に浸透するのを恐れたが故の措置だとも考えられます。
 さらに9月29日の団体交渉からは、先に述べた代理人弁護士2名が当局担当者とともに団体交渉に出席していますが、これらの弁護士は冒頭から、委任を受けた旨の通知書の記載に反して『任意的団交事項には応じられない』等々の些末で不当な発言で時間を稼ぎ5年上限を定めた就業規則の有効性そのものについての議論を避けようとする姿勢を鮮明にしてきました。先に述べた通り、代理人弁護士自身が、東北大学の就業規則改悪の法的な問題がよほど根深いと考えているのか、あるいは受任したばかりで東北大学の事情を十分に勉強していないからか、あるいはまた十分に検討を重ねた上での『交渉権限』を託されていないからか、これ以上の言質を一切取られないよう、時間いっぱい必死に防御に回ったというのが私たちの率直な感想です。
 以上はいずれも労働組合法違反の不当労働行為だと考えます。次回の団体交渉はできるだけ11月中に、遅くとも年内には実施することが申し合わされました。次回の団体交渉までに大学側が、雇い止め撤回・希望者全員の無期転換に向けた前向きな姿勢を示さない場合、その他やむを得ない場合には私たちは、労働組合の当然の権利として、不当労働行為の救済命令申し立てを含むあらゆる合法的な行動をとらざるを得ません。
 早稲田大学のたたかいにおいて、就業規則改定手続きの不備を刑事告発したことを機に、大学に対する批判の声が急速に高まり、形成が逆転していったことを考えてみても、東北大学当局がこうした公的機関の活用を伴う批判の世論さらなる高揚は勝利につながる決定打になるものと思います。
 できればそうした、大学側にとって不名誉な措置は私たちも講じたくはありません。しかし非正規職員の利益を一番に考えるなら、「やるべきときは正しいことをやらざるを得ない」、そのことをここではっきりと申し上げておきたいと思います。
 第五に、ここが一番肝心とも言えますが、雇い止めを撤回し、希望者全員の無期転換を認めた場合、一番得をするのは、ほかならぬ東北大学の側だと思われるからです。
 首都圏・大都市部と比べて賃金水準が相対的に不当に低いせいもあって、東北の職場では、とりわけ人材の確保が難しくなっています。こうした中、労働契約法の法定無期転換を待たずに、独自に前倒しで無期転換する使用者も増えています。東北大自身が、雇い止め後の人材確保の難しさを半ば認める発言もしています。
 ではなぜ東北大は、5年上限による雇い止めにこんなにも拘るのでしょうか。それは私たちにもまだはっきりとはわかりません。しかし、6月27日の1回目の団体交渉で、当局担当者が「私たちは解雇に慣れていない」と発言したことが私たちの心をつかんでいます。
 この発言があったこと自体は、大学当局は、9月29日の2回目の団体交渉でも認めています。しかし私たちが「それが5年上限の真の理由ではないのか」と問いただすと、大学側は「そうは言っていない、撤回せよ」と反論してきました。私たちは「文脈から真意は明らかではないか」と、その発言を撤回することを拒みました。
 これは仮定の話ですが、もし大学当局が、無期転換した非正規職員の個々の解雇に当たり、法に触れるか触れないか個々の判断を誤るリスクを嫌い、そのため5年で一律に辞めていく制度を求めたとしたら、どうでしょうか?当局担当者の将来の安心のため、「自分達の生活や将来を犠牲にして」「柔軟な雇用や低コストの労働力」を提供している非正規職員に、やっと法律に明記された安定した雇用の権利を犠牲にすることを一律に強いる、そんなことは、絶対にできない相談ではありませんか。
 「将来の不確定な資金不安」は「現在の確定的な雇用不安」を押し付ける理由にはなりません。
〈東北大職組との共同〉
 ご紹介が遅れましたが、私たちは、東北地方の大学など研究教育機関で働く非正規教職員が誰でも一人で加入できる労働組合として、2014年8月19日に発足し今日に至っております。まだまだ小さく未熟な労働組合ではありますが、雇用・労働条件を含め「東北の大学で働くならばこのくらいは当然」と言えるようなスタンダードを作り、非正規教職員が力を発揮して大学における研究・教育にも貢献できるよう、東北地方の全大学・研究教育機関を視野に、志は高く、しかし地道に活動を続けております。
 現在のスローガンは『仕事と人間を大切にする東北を!』です。人間を粗末にしないことが、仕事も粗末にしない大前提だ、と考えています。
 組合を選択する自由は労働者の側にあります。もちろん、雇い止めの対象となる准職員、時間雇用職員の皆さんが私たちの組合に加入されることは大変うれしく大歓迎ですし、これまでも、加入された方とは力を合わせて諸活動に取り組んでまいりましたし、それはこれからも同じです。しかし、そのうえで私たちは、東北大学との交渉を進めるうえにおいて、組合結集の力が統一され最大化されるよう、「東北大学職員組合に『も』お入りください」と呼びかけて、共同で組合員拡大ができるようにするため、東北大学職員組合に二重加盟の申入れを行い、懇談を重ねる努力を続けています。東北大学職員組合が合意できる提案となるよう、近日中にもう一歩踏み込んだお話をさせていただく予定でおります。大学当局に対して、私たちが固く団結している姿を見せることで、勝利につなげていきたいと思います。
 特にこの秋が大事です。実際に雇い止めがなされる2018年3月末(すなわち2017年度末)ではなく、勝負はこの秋だと考えています。東北大学がごくわずかな人数の無期転換対象者を選抜する手続きを開始し、職場に不安や失望が広がるのがこの秋、5年上限の最終年度に当たる2017年度の雇用契約に向けて、当局が労働条件通知書・兼契約書に「雇用は(2017年度末、すなわち)2018年3月31日で終わり」と書き込んだうえ、これに同意する署名押印を労働者に求めるのがこの秋以降だからです。
 団体交渉で当局は、「2018年3月31日で終わり、という部分には同意しないという但し書きを添えて署名押印した場合どうするか」という私たちの質問に対し、「それでは契約できない」と発言しました。
 労働契約法の趣旨にもとる違法と言うべき措置を、当局が無理やり強制して同意させることは、新たな問題を起こすことにつながりかねません。
 だから、この秋から手を打ち、高まってきている非正規職員の力の結集をはかることが極めて重要だと考えています。
 幸いにも9月21日には、東北大学職員組合、宮城県労連、首都圏大学非常勤講師組合と4者共同の声明を発表することができました。Facebook上では3日間で2,000件を超える(現時点で2300を超える)アクセスがある大反響を呼びました。大変貴重で大きな前進だったと思いますし、共同して下さっている東北大学職員組合と、懇談の仲介を買って出て下さった宮城県労連には、本当に心から感謝しております。この共同がさらに前進するよう、誠実に粘り強く共同と懇談を重ねていく所存です。
〈むすび〉
 私たちは、この取り組みを続けるために募金のご協力を全国に呼び掛けています。財政を確立強化し、東北大学の件を専属で担当する専従組合員の確保も念頭に置いています。この機会にご協力が拡がりますよう、この場を借りてお願い申し上げます。
 改正労働契約法第18条による無期転換の機会を待つ有期雇用労働者が全国には360万人いると言われています。大学を含む全国の職場で、労働契約法の趣旨に反した雇い止めを行おうとする使用者がまだいるならば、それらがすべて撤回されるよう、そのためにも東北大学で3,200人の雇い止め撤回を瞰制高地(かんせいこうち)の課題と位置付けて、希望者全員の無期転換を勝ち取れるよう、東北大学職員組合と連帯して、また本日ご参集の皆さまをはじめ全国の皆さんと力を合わせて、頑張り抜く決意を最後にもう一度申し上げて、発言といたします。
 ご清聴ありがとうございました。


by tohokuhiseiki | 2016-10-17 09:52 | 東北大学 | Comments(0)